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建設業法・入契法改正と働き方改革の要点【工期ダンピング防止と長時間労働抑制ガイド】

2025.06.09
法・制度

2024年以降、建設業界では建設業法・入契法の改正、時間外労働上限規制の適用など法改正ラッシュが続いています。これらの新ルールは、工期ダンピング防止と長時間労働の抑制を同時に推進し、持続可能な建設現場を実現するためのものです。

この記事では、改正法の全体像とタイムラインを整理し、契約実務、工期ダンピング対策、働き方改革対応を四位一体で機能させる方法を解説します。

法改正の全体図とタイムライン

建設業法・入契法改正や36協定上限規制は段階的に施行され、互いに影響し合います。以下では2024〜2026年度の主要施行日を時系列でまとめます。

年月施行・改訂実務インパクト
2024/4時間外労働上限規制適用45h/月・360h/年の上限。特別条項付きでも年720h等を超えると罰則。
2024/6/14改正建設業法公布工期ダンピング防止条文化、標準労務費制度創設。
2024/12/13監理技術者兼任緩和施行同一市区町村2現場・ICT監理を条件に兼任可。
2025/4発注関係事務運用基準改訂入契法に基づき、予定価格へ最新労務費・材料費反映。
2025/10(予定)工期確保ガイドライン改訂プロジェクト特性を踏まえた適正工期算定式を提示。
2026/4電子契約義務化(国交省直轄)入札から保全まで完全電子化、遠隔臨場ログ連携。

参考:国土交通省『建設業法令遵守ガイドライン(第11版)』

契約実務:改正建設業法・入契法の要点

改正法は請負契約書への「価格変動協議条項」「天災時工期変更条項」を必須化し、資材高騰や豪雨災害時のリスクを契約で吸収する仕組みを強化しました。

また、入契法の新・発注関係事務運用基準は予定価格・最低制限価格に労務費上昇分を確実に反映させ、ダンピング入札の抑制を狙います。

請負契約書の新必須条項

契約書に組み込む際は、国交省のモデル条項をベースに「主要資材10%変動」「不可抗力日数」など具体条件を空欄補完で設定すると流用しやすくなります。

  • 価格変動協議条項:
    資材価格が契約締結後10%以上変動した場合、請負代金を協議・改定できる。
  • 天災時工期変更条項:
    台風・豪雨など不可抗力による遅延は工期延長を協議。書面(協議記録)保存が条件。

入契法の発注関係事務運用基準(改訂ポイント)

  • 労務費・材料費の最新単価反映を義務化。
  • 最低制限価格の算定率を85%⇒87%へ引き上げ(低入防止)。

参考:国土交通省『発注関係事務運用基準(改訂案)』

工期ダンピング対策:適正工期をどう算定するか

建設業法第19条の5は「通常必要な期間に比して著しく短い工期」の契約締結を禁止しています。国交省「適正工期確保ガイドライン(案)」の三段階算定を使えば、根拠ある工期提案が可能です。

「著しく短い工期」禁止規定の概要

建設業法第19条の5は、通常必要な期間より大幅に短い工期での契約を禁止しています。これは「短工期⇒残業・安全費削減⇒品質低下⇒事故」という悪循環を断ち切るために設けられました。実務では次の3要素が不足すると著しく短いと見なされます。

  • 作業日数根拠不足:
    職種別人工×日数が提示されない。
  • 休日考慮不足:
    週休2日相当の休工日が反映されていない。
  • 余裕期間ゼロ:
    気象・資材遅延を見込んでいない。これらを満たさない契約は監督処分や指名停止のリスクがあります。

発注者と再協議する際の3ステップ

発注者と工期を再協議する際は3つの段階を踏むと合意が得やすくなります。

  1. 書面記録:
    適正工期算定シート(Excel)で算出した工程表・数量表を提出。
  2. 協議:
    対面またはオンラインで合意形成し、協議記録書に双方署名。
  3. 行政相談:
    不調時は地方整備局相談窓口へエスカレーションし、行政指導を仰ぎます。

適正工期を算定した上で発注者と交渉する際は、1.書面提示、2.協議、3.行政相談の順に進めるとスムーズです。

Step1:書面提示

ガイドライン付属の計算シートで算出した工程表と数量根拠表を提出し、「工期延長○日」または「休日補正○日」を客観的に示します。

Step2:協議

発注者担当者と対面またはオンラインで協議し、成立した内容は『工期協議記録書』に署名。ここで休日が確保できれば、長時間労働の抑制にも直結します。

Step3:行政相談

合意に至らない場合は地方整備局の建設業相談窓口に書面を提出し、第三者調整を依頼します。行政側が発注者へ改善勧告するケースもあり、実務では2023年度に120件の協議が成立しています。

適正工期確保ガイドラインの活用手順

ガイドライン別紙の計算シート(Excel)を活用し、作業日数⇒休日⇒余裕期間を自動算定すると協議がスムーズになります。

働き方改革と長時間労働の抑制策

時間外45h/月・360h/年の上限規制を守るためには、工程と人員計画を同時に最適化する必要があります。週休2日モデル工事を参考に、共通仮設費補正係数とICTツールで休日確保と生産性向上を両立できます。

時間外労働上限規制の再確認

2024年4月、建設業にも時間外労働の上限が適用されました。原則は45h/月・360h/年で、特別条項があっても年720h・複数月平均80h・単月100hを超えると罰則が科されます。この規制を守るには、工程平準化とリアルタイム勤怠監視が不可欠です。

  • 罰則:
    6か月以下の懲役または30万円以下の罰金。
  • 協定更新:
    毎年、実残業を分析して36協定を更新する必要があります。

月45h・年360hを守る工程/人員計画

  • 工程平準化:
    週単位で重機稼働・作業員投入を均等化し、ピークを20%削減。
  • 多能工育成:
    1人2職種でクロスアサインし、待機時間を圧縮。
  • ICT進捗+勤怠連携:
    出来高遅延と残業超過をダッシュボードで見える化し、超過前に手を打つ。これにより、平均残業時間を28h/月⇒14h/月へ半減した実績があります。

まずピーク工程を洗い出し、重機・職種別人工を週単位で均等化する工程平準化を行います。次に多能工育成で作業をクロスアサインし、人員ピークを15%削減。

最後にICT進捗管理と顔認証勤怠を連携させ、残業アラートを現場代理人と総務が同時に把握できる仕組みを作ります。

これにより実残業は平均28h/月⇒14h/月へ半減した事例が報告されています。

週休2日モデル工事と生産性向上ツール

週休2日モデル工事は、発注者が共通仮設費1.15・現場管理費1.05を補正して休日原資を確保する仕組みです。ここでは具体的ツール導入のポイントを解説します。

  • I顔認証勤怠:
    スマホで顔をかざすだけで入退場・残業時間を自動集計。不正打刻を防ぎ、週休2日取得率をダッシュボードに可視化します。
  • I遠隔臨場:
    ウェアラブルカメラ+電子黒板で立会検査をオンライン化。監理技術者の移動が月40時間削減され、検査待機の人件費も抑制。
  • I工程・原価一体管理システム:
    出来高データを日報から自動取り込み、原価と工数をリアルタイム照合し赤字リスクを早期検知。

これら3つを組み合わせると、「休日を増やしても生産性が向上し利益率を維持できる」ことが実証されています。

四位一体で機能させる社内フロー

契約管理⇒工程計画⇒勤怠モニタリング⇒支払・評価の4要素を循環させることで、法改正対応が現場レベルで実効性を持ちます。

契約管理⇒工程計画⇒勤怠モニタリングの連動図

法改正対応を形骸化させないためには、契約段階で設定した条項を工程計画に反映し、その進捗と勤怠を連携させるワンストリーム体制が重要です。

  • I契約管理:
    法務部が価格変動・工期変更・休日補正条項を標準契約に組み込みます。
  • I工程計画:
    工務部が週休2日・適正工期を前提に工程表を作成し、契約条項をガントチャートの注記にリンクさせます。
  • I勤怠モニタリング:
    ICT推進部が勤怠システムと工程管理をAPI連携し、残業超過や工期遅延をダッシュボードでリアルタイム可視化します。この連動図により、残業超過が発生すると即座に工程調整や追加人員投入を判断でき、改正法のPDCAが機能します。

90日で完了させる実務タスク表

改正対応は3ステージに分け、90日で完了させると現場負担が最小化します。

今週すべきこと

契約書条項洗い出し

  • 現行契約書を点検し、価格変動協議条項・天災時工期変更条項の有無をチェック。
  • 欠落している場合は国交省モデル条項を追補契約書として整備。

1か月以内

36協定の見直しと提出

  • 月次勤怠データを分析し、45h/月・360h/年基準で36協定案を作成。
  • 労基署へ協定届を提出し、勤怠システムに新上限を設定して残業アラートを有効化。

3か月以内

適正工期算定マニュアルの社内展開

  • 適正工期確保ガイドラインのExcelシートをカスタムし、自社マニュアルを完成。
  • 全現場代理人向けオンライン研修で使用方法を共有し、社内ポータルに計算ツールを掲載。

現場からのよくある質問

現場や総務部から寄せられる代表的な疑問について、根拠条文や公式資料を踏まえて回答します。

Q1.工期延長を発注者に拒否された場合どうすればよいですか?

適正工期確保ガイドラインに基づき、数量表・気象データ・週休2日工程表を添付して書面協議を行い、その記録を保存してください。協議が不調の場合は地方整備局の建設業相談窓口へエスカレーションし、行政指導を仰ぐことが可能です。

Q2.36協定の改定タイミングは?

決算年度開始前に残業実績を分析し、新上限ラインで協定届を作成し労基署へ提出するのが推奨されます。改定後はクラウド勤怠と連動し、当月超過アラートを管理職へ自動通知してください。

Q3.外注比率が高い現場の責任分担は?

元請には労務費配慮義務があり、下請の時間外上限違反が続くと元請も共同責任を問われます。標準見積書で休日補正を計上し、下請にも勤怠モニタリングシステムを共用させるのがベストプラクティスです。

Q4.ICT機器コストはどの経費区分に入りますか?

遠隔臨場カメラ・通信費は共通仮設費、BIM/CIMモデル作成費は直接工事費扱いとするのが国交省積算基準の取り扱いです。

Q5.価格変動協議はどのタイミングで請求できますか?

改正契約書ひな形では、主要資材価格が契約締結後10%以上変動、または公共工事設計労務単価が5%以上変動した場合に協議請求が可能です。請求時は資材価格指数(月例)や労務単価(年例)をエビデンスとして添付しましょう。

Q6.天候リスクで工期延長を認めてもらうには?

気象庁過去10年の平年値を用い、降雨・降雪・真夏日数に標準偏差1.0〜1.5を上乗せした余裕期間を算定する方法が国交省モデル契約書の例示です。協議記録に根拠表・気象データを添付すると発注者の合意が得やすくなります。

参考:国土交通省『週休2日に取り組む工事における「よくある質問・回答」』

改正対応を成功させる3つの要点

  1. 契約条項の見直し:
    価格変動・工期変更・休日補正条項を請負契約書に組み込み、リスクを契約段階で吸収します。
  2. 適正工期算定:
    ガイドライン三段階算定+週休2日工程でエビデンスを整え、発注者協議を円滑に進めます。
  3. 勤怠モニタリング:
    36協定とクラウド勤怠を連動させ、残業超過をリアルタイムで自動検知し、是正PDCAを回します。

参考:厚生労働省『建設業「時間外労働の上限規制」のポイント』

改正建設業法・入契法と働き方改革関連法は、工期ダンピングと長時間労働を同時に是正するための車の両輪です。

契約条項・工期算定・勤怠管理を四位一体で見直し、ICTを活用して省人化と品質向上を両立させましょう。

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