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資材高騰時代の建設業法令遵守と請負契約の見直しポイント総整理

2025.06.09
法・制度

鋼材・生コンなど建設資材価格は2020年比で30〜40%上昇し、工事原価を直撃しています。資材高騰が長期化する今、建設会社に求められるのは「法令を守りながら適正価格を転嫁し、資金繰りと品質を守る」ことです。

この記事では、資材高騰の要因を最新統計で概観し、建設業法第19条の『不当に低い請負代金の禁止』と請負契約書の必須条項を整理します。さらに、価格変動条項の使い分けと実務フロー、成功事例、チェックリスト10項目をまとめ、読者がすぐに行動できるガイドを提供します。

資材価格高騰が建設請負契約に与える影響

資材価格指数は2024年3月時点で鋼材+32%、生コン+27%と高止まりしています。価格高騰は次の3つのリスクを引き起こします。

  • 原価割れ受注:
    契約単価が資材費に追いつかず粗利が急減。
  • 資金繰り悪化:
    前払金で資材を確保するも、追加費用が後払いでキャッシュフローが逼迫。
  • 品質低下:
    コスト削減で品質・安全投資が削られ、事故リスクが増大。

直近の資材価格動向と原因

最新統計によると、建設資材全体の価格指数は2023年から2024年にかけても高止まりが続いています。

ウクライナ紛争の長期化による鉄鉱石不足、円安進行で輸入原料が割高になったこと、国内物流の2024年問題で輸送費が上昇したことなどが要因です。資材価格の高騰は一時的ではなく、長期トレンドと見るべき段階に入っていると言えます。

資材2020⇒2024変動率主因
鋼材+32%ウクライナ情勢・原料炭高騰
生コン+27%エネルギー高・輸送費上昇
燃料+40%円安・原油相場高騰

外部要因(地政学リスク・円安)で調達コストが上がり、従来の歩掛・単価では赤字受注が常態化しつつあります。

価格変動が与える3つのリスク

資材価格の上昇は単にコストアップに留まらず、企業の財務・供給網・リスクマネジメントに深刻な影響を与えます。以下の3つのリスクを念頭に置き、早期に対策を講じることが重要です。

  1. 採算悪化:
    粗利率が3⇒1%に低下し、下請支払が遅延。
  2. 下請しわ寄せ:
    労務費を圧縮し標準労務費を下回る契約が増加。
  3. 工事遅延:
    資材納期長期化で工程が3倍、違約金リスク増。

建設業法令遵守の基本と請負契約書の必須項目

建設業法は請負契約の適正化を図るため、契約書に盛り込むべき事項を明確に定めています。特に資材高騰局面では「価格変動協議条項」「天災時工期変更条項」「標準労務費の遵守」がリスクヘッジの生命線となります。以下に必須項目を示し、自社契約書へ反映する際の留意点を解説します。

建設業法第19条の3・4は「不当に低い請負代金の禁止」「書面交付義務」を規定し、見積書・契約書交付と5年保存を義務づけています。違反時は勧告・公表・監督処分の対象となります。

参考:国交省「建設工事標準請負契約約款について」

建設業法第19条の概要と趣旨

  • 第19条の3:
    不当に低い請負代金の禁止⇒標準労務費を下回る見積は是正対象。
  • 第19条の4:
    書面交付義務⇒契約書・見積書を交付し5年保存。

不当に低い請負代金と標準労務費

国交省は公共工事設計労務単価を参考に「標準労務費」を勧告できる制度を創設しました。標準労務費を下回る契約はダンピングと見なされ、建設Gメンの監査対象になります。

価格変動協議条項の必要性

条項未整備だと資材高騰分を回収できず赤字受注になります。契約書に「主要資材10%変動時に協議改定」条項を入れることで、追加費を請求する法的根拠が明確になります。

価格変動対応条項のタイプと使い分け

価格変動条項は資材高騰リスクを請負代金へ適正に転嫁するためのツールです。公共工事では通達に基づく申請手順が決まっており、民間では契約自由の原則に従って条項を設計します。

複数の条項を組み合わせて採用することで、個別資材高騰とインフレ双方に備えることが可能です。

条項タイプ主な適用補正方法
単品スライド鉄筋・アスファルトなど単一資材対象資材費×差額単価
インフレスライドI*2%超上昇時工事費×指数差分率
物価高騰特約民間の包括契約個別交渉(材料費+外注費)

*CPIとは、Consumer Price Index(消費者物価指数) の略称で、総務省統計局が毎月公表している「家計が購入する財・サービスの平均的な価格水準の変化」を表す統計指標です。

参考:国交省「請負契約の透明化による適切なリスク分担ついて」

単品スライド条項

単品スライドは鉄筋やアスファルトなど「工事費に占める割合が1%以上かつ価格変動が10%以上」の資材に限定して補正します。

国交省の決裁フローは、1.残数量確認、2.スライド計算書作成、3.発注者通知⇒承認⇒変更契約で、約2〜3週間が目安です。必要書類は単品スライド計算書、指数推移グラフ、残数量証明書の3点です。

インフレスライド条項

日建連モデル約款は「CPI2%超変動時」に協議できる条文案を提示。

物価高騰特約(民間)事例

民間連合会標準請負契約約款(F-Form)は、契約締結後30日以内の資材高騰も協議対象に。

資材高騰時に取るべき実務フロー

資材高騰を吸収するためのフローチャートは以下のとおりです。

  1. 再見積依頼(価格指数10%上昇時)⇒理由書・指数推移グラフ添付。
  2. 発注者協議:対面・オンラインで値上げ幅を提示し『協議記録書』作成。
  3. 契約変更:変更契約書+単価差額計算書を締結。
  4. エビデンス保存:指数資料・請求書・支払通知書をPDF保存し5年保管。

参考:国交省「単品スライド条項の運用に関する説明資料」

見積・再協議のタイミング

材料発注前/工期途中の2段階で協議義務。早期協議が資金繰りに直結します。

発注者・下請への通知文書例

価格改定を要請する際は、通知文書に次の4点を盛り込むと協議がスムーズになります。

  1. 価格改定要請書
    主要資材ごとの契約単価・最新単価・差額を一覧化。
    差額×残数量で追加費を算出し、調整後請負代金案を提示します。
  2. 主要資材差額明細
    建設物価指数や市況単価票を引用し、上昇率を根拠付けます。
  3. 協議記録フォーマット
    協議日時・出席者・協議事項・合意/保留事項を1ページで整理。
  4. 変更契約書(案)
    追補契約条項をあらかじめ作成し、合意後すぐに締結できる状態にしておくとスピード感が増します。
    発注者へ提出する際は「要請書+差額明細」をセットで提出し、協議終了後に協議記録へ署名⇒変更契約を締結する流れがベストプラクティスです。

契約変更手続きとエビデンス保存

変更契約書・請求書・単価根拠資料は電子帳簿保存法の要件を満たす形でPDF保存し、検索・改ざん防止措置を取ります。

ケーススタディ:価格転嫁に成功した事例

成功事例を研究することで、自社での価格転嫁交渉に応用できるヒントが得られます。以下に公共・民間での成功ケースを時系列で追い、ポイントを抽出します。

公共工事:単品スライド成功例

  • 状況:鉄筋単価+35%
  • 対応:単品スライド申請⇒2週間で変更契約。
  • 成果:追加費3,200万円回収、粗利率を2.5pt改善。

民間工事:物価高騰条項で再協議成功例

  • 状況:
    建築工事、契約締結後に鋼材22%高騰。
  • 対応:
    民間F‑Form特約条項で再協議⇒追加費1,200万円合意。
  • 成果:
    資金繰り悪化を回避し、工程遅延ゼロ。

参考:経済産業省「取引適正化・価格転嫁促進に向けた取組」

価格変動リスクに対する自社点検チェックリスト

以下のチェックリストは、価格変動リスクに対する社内体制が整備されているかを見える化するものです。月次で点検することで、条項漏れや手続き不備を早期に発見できます。

No.チェック項目
1契約書に価格変動条項があるか
2工期変更条項が天災・資材遅延に対応しているか
3見積書に労務費・法定福利費を分離記載しているか
4標準労務費を根拠に値引き拒否できるか
5単価指数を月次モニタリングしているか
6価格改定要請書フォーマットを整備しているか
7協議記録書で双方合意を残しているか
8変更契約書・差額計算書を電子保存し検索可能か
9指数上昇10%時に再見積⇒協議を行う社内手順があるか
10建設物価・資材指数を定期購読し価格上昇を早期把握しているか

資材高騰を乗り切るための3つの要諦

資材価格高騰局面で企業体力を維持するには、契約・協議・モニタリングの3点をバランス良く機能させることが不可欠です。以下の要諦を押さえることで、追加費の適正転嫁と長期的な信頼関係を両立できます。

  1. 条項整備と根拠資料の徹底
    価格変動・天災工期条項を請負契約に組み込み、標準見積書や指数グラフで証拠を固めれば、追加費請求がスムーズに通ります。
  2. 早期・書面協議
    価格指数が5〜10%上昇した段階で迅速に再見積依頼・協議を行い、協議記録を残すことで資金繰り悪化を防止します。
  3. DCAで継続改善
    資材価格モニタリング⇒再協議⇒契約変更⇒実績分析を月次で回し、次の資材高騰に備えた社内標準をアップデートしましょう。

資材高騰は建設業界にとって避けられない外部リスクですが、建設業法令遵守と価格変動条項を適切に活用すれば、粗利低下と品質悪化を同時に防げます。

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