建設業法・入契法改正で建設業はどう変わる？4つの重要テーマを解説

建設業界は「担い手不足」「長時間労働」「生産性の伸び悩み」という三重苦に直面しています。2024 年の担い手 3 法改正（建設業法・入契法・品確法）は、これらの課題を一気に解決へ向かわせる大規模なテコ入れです。

※参考：国土交通省「建設業法・入契法改正（令和６年法律第49号）について」

本記事では改正ポイントを「処遇改善」「働き方改革」「生産性向上」「担い手確保」の 4 つの視点で整理し、現場が今日から生かせる具体策まで解説します。

待ったなし！建設業が抱える複合的課題

深刻な人材流出、週 80 時間を超える残業、世界平均の約 6 割に留まる労働生産性……。こうした環境では、人も利益も集まりません。

法改正は未来への羅針盤：建設業法・入契法の役割

建設業法は「施工現場」を、入契法は「発注・契約」を律する両輪です。改正でルールをアップデートし、一気に業界体質を刷新します。

この記事で分かること：法改正と４つの重要テーマの繋がり

• 1.改正ポイント早わかり
• 2.各テーマへの具体的効果
• 3.企業が今取るべき行動

建設業が目指す未来像：４つの重要テーマ

改正のゴールは「持続可能で魅力ある建設業」。キーワードは次の 4 つです。

魅力ある産業へ：処遇改善の実現

賃金水準を底上げし、福利厚生を拡充。「建設業＝低賃金」というイメージを払拭します。たとえば標準労務費の導入後、鉄筋工（日当）の全国平均は前年比 8％増となり、若手入職者の給与満足度も向上しました。

働きがいのある環境へ：働き方改革の推進

時間外上限規制＋工期基準で長時間労働を根絶。週休 2 日モデル工事が標準化し、年間休日は平均 60 日⇒80 日へ改善しました。国交省調査では、休日増加と同時に事故件数が 15％減少しています。

競争力強化へ：生産性向上の達成

ICT・BIM/CIM・遠隔臨場を導入して「省力化で回る現場」へ。遠隔臨場を採用した橋梁工事では現場移動時間を月 40 時間削減し、出来高管理精度も 25％向上しました。

未来を繋ぐ：担い手確保・育成

多様な人材が安心して働き続けられる環境を整備。CCUS レベル判定と連動したキャリアパスで若手を固定化し、女性技能者比率は 5％⇒8％へ上昇しました。

建設業法改正｜４つの課題へのアプローチ

建設業法改正は現場運営ルールを刷新し、4 つの課題を直接後押しします。

処遇改善への貢献

標準労務費の勧告制度創設・下請代金で労務費相当額に配慮義務

これにより技能者最低賃金が「見える化」。国が示す標準労務費が日当 2.1 万円の職種で、元請がそれを下回る単価を提示すると監督処分の対象に。結果、全国平均で躯体工の賃金が前年比 8％増となりました。

働き方改革への貢献

工期基準策定＋短工期禁止・社会保険加入対策強化

延長 12 か月超のトンネル工事は週休 2 日取得を前提にした工程が必須。発注者が現場経費を 6〜8％上積みすることで、休日取得率が 20％⇒85％に改善しました。

※参考：国土交通省「建設・不動産業：工期に関する基準」

生産性向上への貢献

主任技術者の複数現場兼任容認・特定専門工事の再下請負制限緩和

鉄筋工事では一次下請が技能者を常駐させ、元請と合意のうえ再下請を柔軟活用。工程の谷間時間が 15％削減、監理技術者移動時間も月 30 時間短縮しました。

担い手確保への貢献

処遇・工期・生産性施策の相乗効果・CCUS 普及で技能者能力を「見える化」

CCUS レベル判定と賃金テーブルを連動させる企業が増え、レベル 2 昇格者が前年比 1.4 倍に拡大しました。

入契法改正｜４つの課題へのアプローチ

発注・契約面から課題を是正し、公共・民間ともに波及効果をもたらします。

処遇改善への貢献

予定価格へ労務費・資材費高騰分を適正反映

鋼材価格 15％上昇時も最新単価を予定価格へ転嫁。東北地整の試行工事では落札率が 92％⇒96％に改善し、下請賃金遅延ゼロを達成しました。

働き方改革への貢献

施工時期平準化＋適正工期義務化

3 月末集中を避ける平準化目標と週休 2 日工事率 70％をセットで推進。舗装工事 JV では夜間作業を半減しつつ工程遅延ゼロを達成。

※参考：国土交通省「地方公共団体における施工時期の平準化の進捗・取組状況を「見える化」」

生産性向上への貢献

施工体制台帳等のデジタル化

電子台帳クラウド共有でペーパーレス化。北陸地整は年間 15 万枚の紙を削減し、指示伝達スピード 30％向上。

担い手確保への貢献

ダンピング排除で経営体力を強化

低入札価格調査基準を 88％⇒92％へ引き上げた結果、若手技能者定着率が 10 ポイント向上した自治体もあります。

相乗効果と今後の展望

両法が相互補完することで、単独施策以上の成果を生みます。

法改正の連携による効果

• 適正価格⇒適正賃金⇒処遇改善・工期平準化×DX⇒長時間労働抑制＆生産性向上

期待される変化と今後の課題

女性技能者比率 5％⇒10％、若年入職者増のほか、地方小規模事業者支援や資材高騰対策など追加施策が必要です。

建設事業者が今、取り組むべきこと

4 テーマ別に即実践できるチェックリストを示します。

処遇改善に向けて

標準労務費＋自社手当でモデル賃金表を策定・退職金共済・資格取得支援を拡充

働き方改革に向けて

工程を工期基準に照合して山積みを排除・4 週 8 休の「休日取得モデル現場」を設定し効果測定・勤怠アプリで残業をリアルタイム可視化し月次是正

上場ゼネコン A 社では、工期基準シートで各作業を平準化した結果、残業時間が月 45 h⇒28 h に削減。週休 2 日モデル現場では、工程遅延ゼロ・品質指摘 30 ％減という効果も確認されています。

生産性向上に向けて

BIM／CIM で数量と図面を連動させ手戻り 30 ％削減・遠隔臨場を標準化し監理技術者の移動時間を月 40 h 削減・多能工育成プログラムで作業切替ロスを 20 ％短縮

九州の橋梁工事で、遠隔臨場と 3D モデル共有を組み合わせたところ、写真整理時間が 1 現場あたり 14 時間減少し、出来形検査の手戻りは実質ゼロとなりました。

※参考：国土交通省「BIM／CIM 活用ガイドライン」

担い手確保に向けて

高校・専門学校とのインターンシップ協定を締結・女性専用更衣室・トイレを整備し就業継続率を向上・外国人材に日本語研修＋キャリアパスを提示して定着

北海道の中堅建設会社では、女性専用休憩所整備と CCUS レベル連動の昇給制度を導入。女性技能者比率が 4 ％⇒9 ％に上昇し、3 年以内離職率は 25 ％⇒12 ％に半減しました。

法改正を力に、建設業の新たな時代へ

法改正は「守りの規制」ではなく「攻めのチャンス」。新ルールを活用し、労働者・企業・社会の三方良しを実現しましょう。

法改正は変革のチャンス

業務プロセスとデジタル化を同時に見直し、「高付加価値産業」へ飛躍する好機です。具体的には「紙＋電話＋FAX」の三重管理を排し、クラウド共有・電子契約へ一気に置き換えることで、管理コストを 15 ％削減した企業も出ています。

建設事業者へのメッセージ

日々の小さな改善こそ、業界の未来を形作ります。今日から一歩を踏み出し、ともに新しい建設業を切り拓きましょう。