ルール化が肝!実行予算管理を最適化し利益確保する方法
建設資材や人件費の高騰が叫ばれる建設業において、適正な利益を確保するためには、実行予算の作成及び管理業務が非常に重要です。
とはいえ、ベテラン社員と若手社員のスキル差や、工事件数の多さ、工期や規模にムラがあることから、管理が難しいのも事実です。人手不足が深刻な建設業界では、予算作成・管理に十分な時間を割くことも難しいのではないでしょうか。
こちらの記事では実行予算管理を徹底するために、予算作成(Plan)・収支見込報告(Check)におけるルールとポイントをご紹介します。また今日からご活用頂けるテンプレートも併せてご紹介致します。
目次
実行予算作成におけるポイント
実行予算作成は、原価管理のサイクル「PDCA」のPにあたり、最も重要なフェーズです。作成のポイントをいくつか確認しましょう。
実行予算作成のポイント①予算作成ルールの統一化
実行予算管理が思うように進んでいない会社の課題として多いのは、担当者ごとに予算書のフォーマットや原価単価がバラバラになっていることです。管理統一の為には「コード」を採用し、「マスター化」することが有効です。
工種か原価要素に社内共通のコードで管理をすることで、工事部・経理部などの部門を横断しても一気通貫の管理を可能にします。また、労務費や仮設資材費などは社内標準単価を設定することで、誰が作成しても原価にバラツキのない予算書が作成できます。標準単価を設定する場合は定期的な単価のメンテナンスも重要です。
<要素別の実行予算書の例>
<工種別の実行予算書の例>
実行予算作成のポイント②目的と成果基準を明確にする
管理徹底2つ目のポイントとして、工事担当者のモチベーション維持も見逃せません。モチベーション維持の為には、予算作成の「目的」と「評価基準を明確」にすることがあります。工事は儲かる工事・そうでない工事が「受注段階」で決まっているケースもあります。工事担当者の努力度を、利益率ではなく予算消化率とすることで、実行予算作成へのモチベーションを高めます。
実行予算作成のポイント③管理レベルの明確化
管理レベルもABCランクなどに分類し、管理を徹底する「重点工事」の基準を明確にします。また、工事ランクに応じて予算を確認する「社内承認ルート」を分岐させることも、工事件数が多い会社にとっては有効です。
管理例:3つのルール化
提出規模:受注額100万円以上の工事は実行予算を作成する
提出期限:受注後○日以内に予算提出
承認基準:工期○日以上は社長承認が必須
収支見込報告におけるポイント
実行予算の作成をして、原価計上をしただけでは片手落ちです。今後の見込原価予想を報告してもらう事で、工事の収支見込を会社として把握します。
収支見込管理が思うように進んでいない会社の多くの課題として、工事完成間際ででないと着地粗利が掴めないことがあります。そもそも収支見込管理する目的も曖昧で、社員が必要性を感じておらず、モチベーションが上がらずに作成していない会社があったりもします。
ここでは収支見込管理を実行するためのポイントをいくつか確認しましょう。
収支見込報告のポイント①社内統一の基準作り
収支見込管理の「ルールが決まっていない」「様式も決まっていない」のでは、問題があっても是正する事もできません。 まずは収支見込の「管理種別」を明確にします。工期や受注金額によって、見込収支報告の有り無しの基準設置をします。
例)3ヶ月以上の工期や受注額1,000万円以上の工事を「収支見込管理」の対象とする
また、「管理粒度」(工事一式・協力会社別・工種別など)の設定も重要です。工事ランクに応じて管理粒度を変更するのも良いでしょう。つぎに、「様式の統一」です。「管理粒度」に応じた様式を使用して、統一様式を指定します。報告の中ではどのような項目が必要なのかをフォーマットで指示することで、報告・確認漏れを防ぎます。
<収支見込報告書:協力会社別の例>
収支見込報告のポイント②評価基準
収支見込報告は工事を一覧形式で確認ができる様式でも作成をし、工事担当責任者が参加する収支見込報告会を開催します。報告会は「社員育成の場」と捉え経営者も参加することでモチベーションを上げられるだけでなく、社員の成長を見る良い機会となります。また、予想利益からの低下などの報告があった場合も、上司による是正への良いチャンスの機会と捉え、仕事の段取りへの修正や発注金額の交渉などをアドバイスします。
<収支見込一覧表>
この報告書の例では「予算消化率」と「出来高率」とを比較し、粗利着地の見込みとしています。
収支見込管理を遂行するためのポイント
原価高騰が叫ばれている今、適正な利益を確保するためには「予算の作成」と「定期的な振り返り=収支見込管理」が重要です。限られたリソース(時間・マンパワー)でこれを遂行するためには、以下が重要です。
⑴ 目的と評価基準の明確化
⑵ 社内ルールの設定
⑶ フォーマット統一
まずは使い慣れたExcel等で作成することも良いですが、転記や集計、資料作成に時間を割かれては業務負担が増えるばかりです。予算管理の最適化を測ることと同時に、システムのご検討を頂くことで、併せて業務効率化を実現頂くのはいかがでしょうか。